この記事で解決できる疑問・悩み
1.介護の仕事はパワハラが多いって本当?
2.介護現場では実際にどんなパワハラがあるの?
3.パワハラを受けたらどう対処したら良いの?
今回は、これらの全ての疑問やお悩みを解決していきます。
記事を書いている人
Ke
職業:介護施設経営、経営コンサルタント
経歴:大手証券(営業)→大手不動産(経営企画)→大手転職サービス(部長)→起業(代表取締役)
1,000人以上の面接・採用意思決定を経験し、介護施設を10年経営しています。
"経営者(採用する側)"の視点から、求職者(採用される側)の方を成功に導くお仕事情報をお届けしています。
この記事のゴール
1.介護現場のパワハラの実態が分かる
2.介護現場でよくあるパワハラの事例が分かる
3.パワハラにあった時の対処法が分かる
「介護の仕事ってパワハラが多いって聞くけど、実際どうなの?」
こんな風に思っている方も多いかもしれませんね。
職場でのパワハラについて、実際にニュースなどで目にしたことのある方もいるでしょう。
近年は社会問題化しており、件数も増加傾向にあるようですね。
介護業界でも同様で、実際にパワハラに悩みながら我慢し続けている方もいるでしょう。
そこで今回は、介護現場における「パワハラの実態」と「パワハラの事例」について解説していきます。
そして「もしパワハラを受けた場合の対処法」についても4つ紹介しますね。
もしあなたがパワハラの悩みを抱えているなら、ぜひ最後まで読み、この記事に書いてある通り勇気をもって行動をしてください。
では、スタートします!
目次
【はじめに】介護現場でのパワハラは多いのか?
まずはじめに「介護の仕事ではパワハラが多いって本当?」という疑問への回答です。
答えは「特段多くも少なくもなく、他の業界並みに存在する」といえますね。
私は、金融業界や不動産業界、人材サービス業界を経験した後に介護業界へ飛び込み、介護施設を経営して10年になります。
その中で、どの業界でもそれなりのパワハラを目の当たりにしてきました。
そして「介護だから多い」と感じたことは特になく、逆に他の業界よりも少ないとも思いません。
ただ、介護業界特有の問題として、パワハラ以外のハラスメント(嫌がらせ)が存在するという事実はあります。
具体的には、ご利用者様やご利用者様のご家族からの嫌がらせ(暴言や暴力、セクハラ)を受けるケースですね。
でもこれはパワハラとは少し異なるものですので、また別の機会に解説することにし、今回は「パワハラ」に限定してお話ししていきますね。
なお、介護現場の人間関係に悩む方は、こちらの記事を読んでみてください。
読み終えると、介護職の実際の人間関係の悩みが分かり、悩んだ時の解決法が身につきますよ。
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そもそもパワハラってなに?
さて、介護現場のパワハラの実態を見ていく前に「そもそもパワハラとは何か」を解説しますね。
1.パワハラの定義
パワハラを一言で現すと「職場内での優位性を利用した過度な嫌がらせ」といえます。
法律で明記されているわけではないですが、厚生労働省では以下の3つの要素を全て満たすものをパワハラと定義づけていますね。
パワハラを構成する3つの要素
1.優越的な関係に基づいて行われること
2.業務の適正な範囲を超えて行われること
3.身体的・精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
(出典:厚生労働省 雇用環境・均等局 パワーハラスメントの定義について)
具体的に説明しますね。
まず、パワハラが発生する場所は「職場」といえます。
次に、パワハラの加害者としては、職場内で優越的な地位に立つ「上司や先輩社員」ですね。
そして、パワハラの内容としては「目的や範囲から明らかに外れた業務をさせたり、到底できない量の仕事をさせる」ことや「暴言や暴力や激しい叱責を繰り返し、恐怖を感じさせる」ことなどが該当するでしょう。
一方「仕事には関係のない知人」や「優越的な地位にない同僚や部下」が相手の場合は、パワハラには該当しないといえます。
また「正当な範囲内の業務で、1度だけのきつい言葉で叱責」された場合も同様ですね。
つまり、パワハラに該当するかどうかは、上記の3つの要素に当てはまった場合に総合的に判断されることを覚えておきましょう。
2.パワハラの6つのタイプ
次に、パワハラの内容は以下の6つのタイプに分けられます。
パワハラの6つのタイプ
1.身体的な攻撃
2.精神的な攻撃
3.人間関係からの切り離し
4.過大な要求
5.過小な要求
6.個の侵害
個別の内容は後ほど解説するので、まずは、パワハラにはこの6つのタイプがあることを知っておいてくださいね。
また、この6つのタイプに該当しそうな行為でも、前述の3つの要素のどれかに当てはまらなければパワハラにならない場合があるので留意しましょう。
なお、「介護の仕事はセクハラが多いの?」と疑問の方や「実際にセクハラを受けて困ってる」という方は、こちらの記事を読んでください。
介護現場でセクハラが起こる理由と実際の事例、セクハラを受けた時の対処法について詳しく解説しています。
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介護現場でのパワハラ事例
では、介護現場では実際にどんなパワハラが起こっているのでしょうか?
上記の6つのタイプに沿って具体的に紹介しますね。
1.身体的な攻撃
身体的な力を使って危害を加える行為全般が該当します。
殴る・蹴るだけでなく、ものを投げつけるのも攻撃と見なされますね。
また、実際に身体へ触れなくても、壁や机を叩いたり殴る素振りをするなどして恐怖感を与えることもこれに含まれます。
そして、介護現場でよく見られる身体的な攻撃は、下記のものがありますね。
・ミスを繰り返した時、胸倉を掴んで頭を小突く
・言葉使いがなっていないため、ものを投げつける ・指導してもなかなか仕事を覚えられないため、壁を蹴って威嚇する |
2.精神的な攻撃
精神的な苦痛を与える言動が該当しますね。
介護現場での精神的な攻撃の特徴として、ミスやスキルレベル、業務スピードなどに対する叱責や暴言が多いことがあげられます。
それは、介護がご高齢の方の命を預かる仕事だからですね。
小さなミスや判断・対応の遅れが最悪の事態につながることもあるため、ミスやスキルの正確性、スピードの遅さへの叱責や非難が強いといえます。
通常の範囲の叱責であれば問題ないですが、度を超えた暴言や他のスタッフやご利用者様の前で大声で怒鳴るといった行為は、精神的苦痛を与えるためパワハラに該当するといえます。
なお、介護現場でよく見られる精神的な攻撃は、主に下記の通りです。
・「こんなこともできないのか」と大声で叱責する
・「役立たず」などと、個人の人格を否定するような暴言を吐く ・「クビにするぞ」などと脅す ・他のスタッフやご利用者様など大勢の前で叱責する |
3.人間関係からの切り離し
自分の意に沿わないスタッフを仕事から外したり孤立させるような行動が該当します。
介護の仕事は、一貫した適切なサービスを行うため、個々のご利用者様の情報共有を密にしなければなりません。
そして、職種の異なる多くの人が連携しチームワークを発揮することが不可欠です。
しかし、必要な情報を提供しなかったり、業務を教えない、やらせないといった嫌がらせは実際に見られます。
ぞの結果、適切なケアができずにミスを繰り返し、何度も叱責をされ、精神的に追い詰められてしまうんですね。
介護現場では、下記のような事例が多いといえます。
・挨拶や会話を無視したり拒否をする
・業務上必要な申し送りなどの情報共有をしない ・打ち合わせやスタッフ会議などから外す |
4.過大な要求
1人では対応できないレベルや量の業務を与えられた場合に該当します。
慢性的な人材不足に苦しむ介護業界では、介護職1人当たりの業務量が多く負担となるケースがあります。
そしてその業務量がスタッフ間で均等ではなく、特定の介護職に業務が集中する状態が長く続くとパワハラといえますね。
例えば、身体的な負担の大きい介助業務を全て任せることが該当します。
また、管理職だからといって現場業務から管理業務、書類作成など、就業時間内に到底終わらない量の仕事を長期間要求される場合は、過大な要求に当たるでしょう。
介護現場では、下記のような事例がよく見られます。
・十分な指導や情報共有をせずに、過去に経験のない業務を与える
・他にもスタッフがいるのに、毎日入浴介助を担当させられる ・終業時間内には終わらないボリュームの業務を与えられる |
5.過小な要求
能力に応じた業務を与えられない場合に該当します。
介護の仕事は人材不足かつ1日の業務量も多いことから、効率よくスピーディに業務を進めることが求められます。
でも、高齢の方々の命を預かる仕事のため、慎重になって時間がかかってしまう介護職も少なくありません。
それが理由で、仕事を奪われたり与えられないことで精神的な苦痛を感じてしまった場合、過小な要求に当たるといえますね。
主に、下記のようなケースが見られます。
・「仕事が遅いから私が代わりにやる」と業務を奪われてしまう
・「邪魔だから何もしなくていいよ」と業務を与えてもらえない |
6.個の侵害
業務に関係のないプライベートの情報を詮索する場合に該当します。
例えば、上司や先輩から休日の過ごし方や交際相手の有無などを聞かれることなどがありますね。
仕事には関係がなく、自分が話したくない個人的なことを細かく聞かれるような状況が何度も続く場合は、個の侵害に当たるといえるでしょう。
また、プライベートのSNSのアカウントに対し友達申請をしたりメッセージを送ってくるケースが、ここ数年で増加しています。
これも同じように、本人が不快感を抱き精神的苦痛を感じた場合はパワハラに該当しますね。
下記が、介護現場でよく見られる個の侵害の事例ですね。
・交際相手や配偶者の有無などをしつこく詮索する
・何度も飲み会に誘ったり、懇親会欠席の理由を無理やり聞き出そうとする ・個人のSNSアカウントに、仕事に関係のないコメントを何度も送ってくる |
パワハラを受けた時の4つの対処法
ここまでで、パワハラにはいろいろな要素があることが分かったと思います。
そして、基本的には加害者の個人的な感情が要因ということにも気づいたのではないでしょうか。
本来は、パワハラにあわないよう事前に対策をするに越したことはありません。
でも、相手の感情をコントロールすることは被害者側にとっては簡単ではないですよね。
それゆえ、パワハラを未然に防げているケースはかなり少ないのが現状といえるでしょう。
しかし、パワハラを受けて我慢をし続けていても心身に決して良い影響はなく、最悪の場合は精神を崩してしまいかねません。
大切なのは、我慢をせずに勇気を出して早期に対処することです。
ここからは、パワハラを受けた時の対処法を4つ紹介しますね。
具体的には、以下の4つがあります。
パワハラを受けた時の4つの対処法
1.加害者との距離を取る
2.パワハラの内容を記録し証拠を残す
3.上司や人事担当者に相談する
4.外部の専門機関に相談する
では、順に解説しますね。
1.加害者との距離を取る
まずは、加害者から距離を取ることが先決です。
加害者の攻撃による身体的・精神的苦痛から逃れ、自分自身の心身の健康を守ることを1番に考えましょう。
するべきことは、加害者の上司に当たる人や人事権限者に対して、部署移動を申し出たり、急を要する場合は休職をすることですね。
同時に、自分の状況に理解を示してくれそうな信頼できる仲間に相談し、共感を得ましょう。
1人で悩まず「信頼できる仲間が味方してくれている」という安心感を抱くことが大切です。
2.パワハラの内容を記録し証拠を残す
次に、実際に受けた身体的・精神的苦痛を事実として記録し、証拠を残しましょう。
身体的な攻撃により苦痛を受けた場合は、怪我をした部位を画像として残したり、通院して診断書を入手しておくと後から有利になります。
一方で、精神的な攻撃で受けた苦痛は、一般的に肉体的な苦痛と比べ立証するのが簡単ではありません。
また会社組織の中では、立場が上の加害者の話が尊重されたり優遇されやすい傾向にあります。
そのため、あとから第三者が客観的に判断できるよう、パワハラの内容を証拠として具体的に記録をすることが重要ですね。
メモ帳や日記などに、パワハラを受けた「日時」と「場所」、「相手」、「具体的な内容」をできるだけ詳細に記録しましょう。
また、実際の音声データは主観を挟まないためより確実な証拠となるので、ICレコーダーやスマートフォンなどで録音するとなお良いでしょう。
3.上司や人事担当者に相談する
記録やデータが集まったら、上司や人事担当者に相談しましょう。
相談の順番としては、加害者の上司が1番目です。
もし、その上司が相談に消極的だったり、そもそも加害者の上に上司がいない場合は、人事担当者や社内のハラスメント相談窓口などに相談しましょう。
その際、パワハラの目撃者や他に被害者がいるのなら、可能であれば同席してもらうと良いですね。
そして、記録した内容や音声データを示しながら、客観的な事実を個人的な感情を挟まずに説明しましょう。
また、この相談の音声データや記録も残しておくと、後から情報の齟齬がなくなるため有効です。
なお、組織が小さく、加害者が代表者で唯一の上司かつ人事担当者、相談窓口の場合などは、直接相談しづらいですよね。
その場合は、外部の専門機関に相談しましょう。
次の項で具体的に説明しますね。
4.外部の専門機関に相談する
社内に相談相手がいない、相談しても解決しない場合などは、外部の専門機関を活用しましょう。
下記の専門機関では、無料相談を実施していたり、電話での相談も受け付けています。
担当職員が、事業所の視察や関係者の調査を実際に行います。
そして、必要に応じ非常に強制力の強い指導や是正勧告などの対応が期待できます。 |
厚生労働省が各都道府県に設置している、労働相談の窓口です。
専任の職員が、パワハラを含む労働相談全般について面談や電話相談に対応してくれます。 |
介護施設は、介護保険料という国の財源から介護報酬(売上)を受け取っています。
また、介護施設を開設するには、国や自治体の許認可を受けなければなりません。
そのため、不祥事があると行政からの指導や監査の対象となるため、外部機関へのパワハラ相談が間接的な是正につながる可能性も高いです。
状況に応じて、外部機関を有効活用してくださいね。
なお、介護の仕事をやめたくなった方は、こちらの記事を読んでみてください。
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まとめ
では、最後にここまで学んだことを振り返ってみましょう。
今回解決した悩み・疑問はこの3つでした。
1.介護の仕事はパワハラが多いって本当?
2.介護現場では実際にどんなパワハラがあるの?
3.パワハラを受けたらどう対処したら良いの?
介護の現場でのパワハラは、他の業種と比べ特段多いわけではありませんが、相当数は存在することが分かりましたね。
また、介護現場で起こりがちなパワハラの事例についても知ることができたでしょう。
そして、実際にパワハラを受けた場合の4つの対処法も理解できたと思います。
介護は、ご高齢の方の命を預かる責任ある仕事なので、ミスに敏感で業務スピードが重視される傾向にあります。
そのため、スキルや判断力、仕事の迅速さに欠ける場合にパワハラが起こるケースが多いですね。
また、慢性的な人手不足から1人当たりの業務が過大になり、結果的にパワハラにつながる場合も見られます。
しかし、スタッフ間の連携とチームワークが重視される介護業界では、パワハラによりこれらが分断されると、ご利用者様の命に係わる事態に陥ることもあるでしょう。
そのため、パワハラにあったら1人で悩みを抱え込まず、速やかに適切な行動を起こすことが肝要ですね。
それが、自分の心身の健康を守るため、そしてご利用者様の大切な命を守るための唯一の方法です。
でも、行動するにはとてつもない勇気とパワーが必要ですよね。
社内で解決を図るに越したことはないですが、解決されない可能性もあるでしょう。
その場合は、外部機関に頼ることで、客観的な立場から解決の手助けをしてもらいましょう。
そして、解決するしないに関わらず、今の職場にいづらい・いたくないと思ったらどうしたら良いでしょうか?
その場合は、自分の心と身体を守るため、躊躇せずに転職をしましょう。
深刻な人材不足の介護業界は、求職者に圧倒的に有利な超売り手市場で、自分の希望に合った求人が見つけられる可能性がとても高いです。
そして、希望の求人が見つかったら、応募前にパワハラの可能性がないかを事前にしっかりと調べることが大切ですね。
具体的には、実際に施設見学に出向き職場の雰囲気を確認したり、転職エージェントのキャリアアドバイザーに事業所の雰囲気などを確認するといった行動が必要です。
そして、転職に成功したら今の苦しみから解放され、心機一転明るい日々を送ることができるようになるでしょう。
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この記事をきっかけに、介護現場のパワハラに悩む全ての方の悩みが解決されることを願っています。
では、今回はここまでです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!