この記事で解決できる疑問・悩み
1.介護現場で接遇が重視されるのはなぜ?
2.介護現場で必要な接遇って具体的にどんなこと?
3.接遇をする上での意識することや注意点はある?
今回は、これらの疑問やお悩みを全て解決していきますね。
記事を書いている人
Ke
職業:介護施設経営、経営コンサルタント
経歴:大手証券(営業)→大手不動産(経営企画)→大手転職サービス(部長)→起業(代表取締役)
1,000人以上の面接・採用意思決定を経験し、介護施設を10年経営しています。
"経営者(採用する側)"の視点から、求職者(採用される側)の方を成功に導くお仕事情報をお届けしています。
この記事のゴール
1.介護現場で接遇が重視される理由が分かる
2.介護現場で実践すべき接遇が具体的に分かる
3.接遇の際に意識すべきポイントが明確になる
「介護現場で接遇が重要って聞くけど、なぜ?」。
「具体的にどんなことをすればいいの?」。
「そもそも接遇ってなに?」。
新人の介護職の方や、これから介護の仕事を始めようという方は、こんな疑問を持っている方も多いでしょう。
「接客業」ともいえる介護の現場では、単に「接客」スキルを身につけているだけでは足りません。
ご利用者様やご家族様により質の高いサービスを提供するため「接遇」スキルが重視されるようになってきました。
そこで今回は、介護現場で「接遇が重視され始めたきっかけ」を紹介しながら、「重視される4つの理由」について説明します。
その上で「介護現場で実践すべき5つの接遇マナー」を解説しますね。
さらに「介護職が接遇マナーを習得するメリット2つ」と「接遇で意識したい4つのポイント」も明らかにしていきます。
この記事を最後まで読むことで、ご利用者様の満足度を一層高められるようになるでしょう。
それだけでなく、接遇スキルをマスターすることで、あなた自身も多くの恩恵を受けられるようになりますよ。
では、さっそく始めましょう!
目次
そもそも接遇ってなに?
「接遇」という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正確に答えられるでしょうか?
「接遇」とは「もてなすこと」という意味があり、介護現場では「おもてなしの心をもってご利用者様やご家族様にサービスを提供すること」を表します。
単に「お客様に必要なサービスを提供する」だけの「接客」のさらに上を行く技術なんですね。
「接遇」はもともと、ホテルなどのサービス業や百貨店などの販売業で取り入れられていました。
しかし、現在では「接客」を行うあらゆる業種で重要視されるようになり、介護業界も例外ではありません。
その理由は、おもてなしの心を持って接しサービスを提供することが、ご利用者様に喜びと満足度の向上につながると考えられているからですね。
ちなみに私が経営する施設でも、創業時からスタッフの接遇教育には力を入れて取り組んでいますよ。
介護現場で接遇が重視され始めたわけ
では、介護業界で接遇が重視されるようになったのはなぜでしょうか?
それは、2000年にスタートした介護保険制度が背景にありますね。
介護保険制度が始まる以前の介護サービスの提供は「措置制度」によって行われていました。
実はこの制度では、介護サービスの利用申請に対し市町村がサービス内容や施設を一方的に決定し、ご利用者様に選定権も決定権もなかったんですね。
しかし、介護保険制度でご利用者様が自らサービスを選択できる「選択利用制度」に変わったのをきっかけに、介護業界では「接遇」を意識し重視するようになったといえます。
それは「数多くの事業所の中から選んでいただく」ために、サービスの質を向上させる必要が出てきたからですね。
また、異業種から介護事業に参入する企業も増え、特にサービス業出身の会社は介護を「サービス業」と捉え、高い接遇スキルを介護業界に持ち込んだといえます。
その結果、介護業界全体において、従来の単なる「礼儀作法」のさらに上を行く「接遇」が重視されるようになったんですね。
介護現場で接遇が重視される4つの理由
ここからは、介護現場で接遇が重視される具体的な理由について解説します。
それは、主に下記の4つの理由がありますね。
介護現場で接遇が重視される4つの理由
1.ご利用者様の尊厳を守るため
2.信頼関係を築き安心安全なサービスを提供するため
3.多くの事業所の中から選んでいただくため
4.事業所の雰囲気を良くするため
1つずつ見ていきましょう。
1.ご利用者様の尊厳を守るため
介護職の使命は「介護を必要とする方の尊厳を守り、ご自分らしい生活を送れるためのサポートを行うこと」です。
また「尊厳を守る」とは「その方が人として生き、存在していることをかけがえのない価値として大切にすること」といえます。
介護施設のご利用者様は、ほとんどが私たち介護職よりも先輩で目上の方ですよね。
そんな人生の大先輩が自分1人で日常生活を送れなくなったとしても、決して見下したり子ども扱いをしたり言動を制限されるべきではありません。
1人の人間として敬意を払いながらサポートをするためにも、正しい接遇マナーをマスターする必要があるんですね。
2.信頼関係を築き安心安全にサービスするため
介護の仕事は、ご利用者様との信頼関係がなければスムーズに行うことができません。
なぜなら、直接身体に触れたり密着する場面が多いため、信頼関係がなければ警戒され、サービスに抵抗や拒絶をされてしまうからですね。
そして、思わぬ事故や怪我につながることもあるでしょう。
ご高齢の方の命を預かる仕事だからこそ、安心安全なサービスの提供が不可欠です。
そのためにも、おもてなしの心に溢れた思いやりのある接遇を実践し、心を開いてもらい信頼関係を築く必要がありますね。
3.多くの事業所の中から選んでいただくため
介護事業所は、ライバルが乱立する中で選ばれ勝ち抜いていかなければなりません。
高齢化がすさまじい勢いで進展する中で介護保険制度が始まり、民間企業の介護事業への参入が激増しました。
そこで、多くの事業所の中から選んでご利用いただくために必要なのが、接遇といえます。
事務的で画一的なサービスの事業所も多い中で、おもてなしの心に溢れた温かなサポートで差別化をする施設は、きっとご利用者様やご家族様に選ばれるはずですよね。
4.事業所の雰囲気を良くするため
接遇は、ご利用者様などの外部に向けるだけでなく、組織の内部においても重要ですね。
介護の仕事は、職種の違う多くの人たちとの連携が必要で、チームワークがとても重視されます。
その中で、相手に対する思いやりや気遣いなどの接遇を心がけることで、コミュニケーションが円滑になり、人間関係が良好になるといえます。
また、個々の介護職が働きやすさを感じることで精神的な余裕が生まれ、ご利用者様へのサービスの質の向上も期待できます。
そして、良好な職場の雰囲気はご利用者様やご家族様に伝わり、最終的にご利用者様満足度の向上にもつながるでしょう。
5つの接遇マナーを身につけよう
では、日々の介護の業務では、具体的にどんな接遇マナーが求められるのでしょうか?
ここでは、介護現場で求められる5つの接遇マナーを解説しますね。
介護現場における5つの接遇マナー
1.身だしなみ
2.表情
3.挨拶
4.言葉遣い
5.態度
では、1つずつ説明しましょう。
1.身だしなみ
身だしなみは、あなたの第一印象を左右する大切な要素といえます。
介護現場での身だしなみでポイントになるのは「清潔感」、「機能性」、「安全性」の3つですね。
汚れや乱れのない髪形、ナチュラルメイク、口臭や体臭への配慮、短く切りそろえられた爪、洗濯された綺麗な服装などを心がけ、「清潔感」を保持しましょう。
また、動きにくいだぶついた服や、ご利用者様の指にかかりやすいフード付きの服、ポケットの多いズボンなどは避け、動きやすくご利用者様の想定外の動作に対応できる「機能性」の高い服装を心がけましょう。
そして、介助の際にご利用者様が怪我をする恐れのあるピアスや指輪、ネックレスなどのアクセサリー類は身につけず「安全性」に配慮しましょう。
なお、「介護職がピアス禁止の理由」は、こちらの記事で詳しく解説しています。
これを読めば、3つの理由、ピアス以外のおしゃれはどこまでO.K.なのかが明らかになりますよ!
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介護職はピアスOK?どこまでおしゃれできるかを介護経営者が解説!
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2.表情
ご利用者様と接する時の表情は、親しみやすく明るくにこやかな笑顔が基本ですね。
そして、話をしたり聞いたりするときは必ず、相手の目を見ることも大切です。
また、笑顔を浮かべた穏やかな表情でないと、ご利用者様は気軽に話しかけられず、思いやニーズを正確に汲み取ることができません。
そのため、直接接していない時でも、安心感を与え信頼をして任せたいと思っていただけるよう、常に明るい表情を心がけてください。
さらに、マスクを着用していると表情が分かりづらく、ご利用者様に不安を抱かせてしまうことがありますね。
よって、口元の両端の口角を上げつつ、目を細め目尻を下げるなど目元でも笑顔を表現することを意識しましょう。
3.挨拶
介護現場の1日は、挨拶に始まり挨拶に終わります。
ご利用者様はもちろん、ご家族様や来客者、スタッフに対しても率先して挨拶しましょう。
ご利用者様に声をかける際は、明るい表情で正面からゆっくりと近づき、目線を合わせにこやかに話すことを心がけてください。
椅子に座っている方やベッドに横になっている方であっても、必ずしゃがんで目線を合わせることが大切です。
また、元気のない小さな声の挨拶は不快感を与えかねません。
ご利用者様によっては大声が苦手な方もいるため、必ずしも大きな声である必要はないですが、小さすぎず聞き取りやすいよう、ハキハキと話しかけましょう。
さらに「おはようございます」や「おやすみなさい」といった挨拶に、簡単な言葉を加えるとなお良いですよ。
「今日も1日楽しく過ごしましょう」、「ゆっくり休んで、また明日元気にお会いしましょう」などの簡単な会話が距離を縮め信頼感を深めるので、実践してみてくださいね。
なお、適切な声かけのコツを知りたい方は、こちらの記事を読んでください。
声かけが「重要な理由」と「意識すべき5つのポイント」、ご利用者様の特性や日々のケアの場面に合わせた「適切な声かけの事例」について詳しく解説しています!
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声かけは介護の基本!5つのコツとケース別事例を介護経営者が解説!
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4.言葉遣い
介護現場でのご利用者様に対する言葉遣いは、必ずしも敬語が望ましいわけではありません。
ご利用者様は、ほとんどが私たち介護職よりもはるかに年配の方々です。
そのため、人生経の大先輩であるご利用者様に敬意を表し、敬語で接するのが接遇マナーと考えるのが普通のような気がしますよね。
でも、ご利用者様の日常生活の場である介護現場では、ご利用者様によっては、慣れない言葉遣いや過剰にへり下った表現を堅苦しく感じる方もいます。
そのため、日常的で家庭的な「親しみ」を感じられる言葉遣いが理想ですね。
ただし、ここでいう「親しみ」とは、馴れ馴れしい言葉遣いや敬意を欠いた表現ではありません。
ご利用者様を敬う気持ちを忘れず丁寧な言葉遣いで、「ゆっくり」、「はっきり」と「分かりやすく」話すことを心がけましょう。
また、耳の遠い方には「大きめの声」で、元気のない方には「明るく元気」に声かけをするなど、ご利用者様に合わせ個別の対応を行うことが、介護における接遇の大きなポイントですね。
なお、介護現場では決して使ってはいけない言葉が10種類あり、こちらの記事で解説しています。
決して使ってはいけない言葉と正しい言葉遣いについてより深い知識をつけ、正しいケアを行ってくださいね。
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介護現場で絶対に使ってはいけない10の言葉を介護経営者が解説!
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5.態度
上記の4つの接遇マナーに優れていても、態度が伴っていないと全てが台無しです。
お相手に好印象を与える立ち居振る舞いを心がけることが重要ですね。
例えば、立っている時は背筋をしっかり伸ばし、胸を張ると良いでしょう。
そして、座っている時は椅子に浅めに座り、膝の角度は直角にして背筋を伸ばし胸を張ることを意識すると良いですね。
さらに、コミュニケーションの際は必ず、お相手の真正面に立ち、常に身体が見えている状態で行いましょう。
また、腕や足を組むと高圧的な印象を与えるため、絶対に避けましょう。
大切なのは「ご利用者様が話しかけやすい態度」を意識することです。
おもてなしの心を持ってお相手を思いやる気持ちを常に持っていれば、おのずと態度に現れ、自然と声をかけられるようになるはずですよ。
介護職が接遇マナーを習得するメリット2つ
接遇スキルを身につけることが、事業所にとって重要なことは分かったと思います。
でも、実は介護職のあなた自身にとってもメリットがあるんですよ。
ここでは、そのメリットについて2つ紹介します。
具体的には、下記の2つがありますね。
介護職が接遇マナーを習得するメリット2つ
1.介護職としてスキルアップできる
2.社内で評価されキャリアアップにつながる
では、順に解説します。
1.介護職としてスキルアップできる
介護業界における接遇への重要性は、年々高まっています。
介護職が接遇を学ぶことで「ご利用者様のお気持ちに寄り添い理解する姿勢」や「相手に好印象を与える身だしなみや表情、言葉遣い」などが身につきます。
それはまさにスキルアップといえ、その結果サービスの質の向上にもつながりますね。
なお、介護職としてスキルアップするには、介護職員初任者研修や介護福祉士実践者研修、介護福祉士などの資格を取得するのが一般的です。
でも、これらの資格取得の学習カリキュラムでは「接遇」を専門的に学ぶことはありません。
だからこそ、接遇を習得することは他の有資格者にはないプラスアルファのスキルアップを実現できるといえますね。
2.社内で評価されキャリアアップにつながる
接遇は、ご利用者様などの外部だけでなく、組織内部にも良い影響をもたらしますね。
前述した通り、事業所の雰囲気を良好にするといったことなどがあげられます。
また、接遇スキルが習得できるのは、自ら意欲を持って習得する努力をした結果ですよね。
つまり、ご利用者様満足度の向上、社内の雰囲気の向上といった目に見える結果に加え、仕事への意欲や意識の高さも評価されることが期待できます。
なお、介護職のキャリアアップの仕方をもっと具体的に知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
これを読めば、その仕組みや必要な経験・資格、給与の増加イメージが全てわかりますよ。
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接遇で意識したい4つのポイント
それではここからは、実際に接遇を実践する際に意識して心がけるべきポイントを4つ紹介します。
具体的には、以下の4つがありますね。
接遇で意識したい4つのポイント
1.目線を合わせる
2.じっくりと傾聴する
3.適度な距離感を保つ
4.常に意識を保つ
それぞれ見ていきましょう。
1.目線を合わせる
前述しましたが、ご利用者様とのコミュニケーションでは、目線の位置や高さを合わせましょう。
椅子に座っている方やベッドに横になっている方には、かがんだりしゃがむなどをして決して上から見下ろすことのないようにしてください。
そして、真正面からお相手の方の目を見て話すことも忘れないでくださいね。
2.じっくりと傾聴する
傾聴とは「お相手の立場になってお気持ちに共感しながら聴く」ことです。
介護の接遇では、自分で話すよりお相手のお話に耳を傾け、お気持ちに寄り添うことが重要なんですね。
ご利用者様は、淋しさや多くの不安を抱えながら、他人の介護を受けています。
そんな淋しい気持ちや不安な思いを時間をかけて親身になって聞いてあげることで、安心しやがてそれは信頼に変わります。
どんなに忙しくても、ご利用者様から声をかけられたら手を止め、じっくりと傾聴してあげてください。
そして、最も身近な理解者として頼られる存在になってくださいね。
3.適度な距離感を保つ
近すぎず遠すぎず、適度な距離を持って接しましょう。
介護施設は、私たち介護職にとっては職場でも、ご利用者様にとっては日常生活の場ですよね。
そんなパーソナルスペースに必要以上に立ち入ると、不快感やストレスを与えてしまい、介護拒否につながる可能性もあります。
そのため、パーソナルスペースやプライバシーを侵さないよう、必要がない限りは適度な距離感を保つことを心がけましょう。
4.常に意識を保つ
ご利用者様と接していない時でも、常に接遇の意識を保って業務に当たりましょう。
例えば、一人で廊下を歩いている時、だらしなく背中が曲がっている介護職を見かけることがあります。
また、スタッフ同士で会話する時、若者言葉や普段の乱暴な言葉遣いが出てしまうこともよくありますよね。
ご利用者様と接していなくても、常に見られていたり聞かれているものと考えて、接遇の意識を緩めることなく、周囲の誰の目にも好印象に見えるような姿勢や態度を忘れないでください。
まとめ
では、最後におさらいをしましょう。
今回解決した悩み・疑問は以下の3つでした。
1.介護現場で接遇が重視されるのはなぜ?
2.介護現場で必要な接遇って具体的にどんなこと?
3.接遇をする上での意識することや注意点はある?
介護業界で接遇が重視されるようになった背景が分かったことと思います。
また、介護現場で接遇が重視されるのは、4つの理由があることも理解できたでしょう。
そして、介護現場で求められる接遇マナーは5つあることと、接遇を習得することで、ご利用者様や事業者だけでなく介護職にも2つのメリットがあることも分かりましたね。
さらに、実際に接遇を実践する際に意識するポイントも、4つ知ることができたはずです。
でも、接遇には正解はありません。
それは、ご利用者様お1人お1人ごとに、性格や嗜好、好みやこだわりが違うからですね。
そのため、画一的な対応をするのではなく、個々のご利用者様に個別でじっくりと向き合い、個々人に合った対応をすることが大切です。
おもてなしの心と思いやりを持って、お1人お1人に合わせた自分なりの接遇スタイルを見つけ、実践してくださいね。
それでは、今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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